鉄道会社は隆盛をきわめた。まず、電車を通す予定の沿線で上地を買う。線路や駅の用地だけでなく、その周辺も大きく買いこめる。鉄道が通る前だから、上地の値段は安い。安く買った土地は、電車が通り、駅ができてから少しずつ売ったり、貸したりする。鉄道会社は戸建ての住宅街をつくり、駅前には系列のスーパーマーケットをつくる。すると家を買った人たちは、電車に乗って通勤・通学するし、スーパーマーケットで買い物もしてくれる。さらに、始発駅に鉄道会社経営のデパートを、中間地などには遊園地をつくる。そうすれば、休みの日はデパートで買い物や食事をしてくれて、遊園地にも行ってくれる電車を通すと、電車賃だけでなく、いろいろなところから鉄道会社にお金が入ってくるわけだ。この仕組みが考え出されたのは、19世紀のイギリスにおいて。蒸気機関車の発明で鉄道が生まれたときにはもう考え出されたのだから、世の中には頭のよい人間がいるものだ。その方式を日本で初めて取り入れたのは阪急電鉄。阪急百貨店をつくり、宝塚ファミリーランドを開設。中間に沿線のイメージを上げる高級住宅地・芦屋を開発した。以後、東急、小田急、京王、西武、東武……東京でも大手の私鉄はすべて同じ手法を取った。以来、「自分の陣地に取り込み、あとから際限なくお金を吸い取る」のは、効率よく大儲けする商売の基本的やり方となった。携帯電話もインターネットも、同じ発想である。そして、私はこの発想の商売が嫌いだ。嫌っているからこそ、「マンションは駅に近い物件さえ買っておけば間違いない」という考えにも同調できないのである。